としま文化フォーラム2015第3回に行ってきました。(前半)
2015.11.18
その他
11月14日㈬、高野豊島区長が塾長を務め、萩宏東京芸術劇場副館長が実行委員長を務められている「としま文化フォーラム2015-アート・カルチャーで世界をつなぐ-」第3回を受講してきました。
今回のテーマは「豊島区の秘めた可能性」。日本最大の会員数を誇る動画サイト「ニコニコ動画」を運営する株式会社ドワンゴ取締役CCO横澤大輔さんと「国際アート・カルチャー都市構想」のチーフプロデューサーである前田三郎さんがいらっしゃいました。講演は主に前田さんが聞き手となり、横澤さんがネットメディアと地域がどのように結びついていくか、というのをこれまでの運営の歴史になぞってお話されていました。
おそらく今回の文化フォーラムでも、30代以下の層では最も知名度のある講師だったのではないでしょうか。会場を見渡しても比較的受講者の年齢層が今回は低めだったような気がしました。
㈱ドワンゴは先日当ブログでも告知した「池袋オータムカルチャーフェスティバル」の口火を切った「池袋ハロウィンコスプレフェス」を企画・運営していて、現在進行形で池袋のまちづくりと深く関わっているので、その話には具体性があり、大変興味深かったです。今回は写真撮影が都合によりできなかったため、講演の内容を前後編に分けて、文量を多めにして伝えたいと思います。
YouTubeなどの動画サイトに、字幕でコメントが流れるという革新的な手法によって、主にいわゆる「オタク」層の支持を得て会員数を増やしてきたニコニコ動画は2006年、原宿にスタジオ、六本木にイベント会場を作りました。いわゆるオタクの聖地である秋葉原ではなく、原宿や六本木など、どちらかというと主流カルチャーの発信地に拠点を構え、オタクに留まらない層にアピールを行い、更に知名度を高めたニコニコ動画は政治討論番組の生放送という、ネットメディアとして異例の番組を制作し、有権者がコメントで質問を直接政治家に投げかけることを可能にするなどで注目を浴びてきました。
そのドワンゴが原宿から池袋へ「本社」を移したのが2014年。ネットを介したコミュニケーションだけではなく、ネットとリアルの中間に位置する大規模イベントを行ってきたニコニコ動画は、この池袋でイベント以外でも常にネットでつながりを持った人同士がコミュニケーションを取れる場、ネットとリアルが融合したプロモーションプラットフォームに相応しいと考えたそうです。
いわゆる「オフ会」の大規模バージョンである「ニコニコ超会議」参加者はニコニコ動画の会員女性比率が30%程度であるのに対し、リアルの場であるこのイベントでは41%だったそうです。現実にコミットメントするのは女性の方で、継続的にイベントを動かす可能性が女性ユーザーにあるのを見越して池袋という街に注目したのだそうです。女性が集まる場に男性が集まる、というのは古今東西変わりはありません。現在、池袋東口は女性のオタクの聖地となっており、かつ池袋駅は世界でも乗降者数が新宿駅についで2位と言われており、拠点としてまたとない場所なのだといいます。
横澤さんの話でとりわけ印象に残っているのは、新宿や渋谷といった街と池袋の街を歩く若者の様子の差異についてです。前者が急ぎ足で歩くのに対し、池袋はゆったりとしているというのです。前者は明確な目的地があり、そこを目指して前を向いて歩くのに対して池袋を歩く若者はどこか当てどなく、目的もなく、上を向いて歩いているのだそうです。確かにこれら若者の様子はサンシャイン60通りなどで筆者も実際に感じます。これはかつてニコニコ動画の拠点があった原宿の竹下通りにも通じる気がします。だとすると彼ら若者に何か目的や方向性を作れば、それは大きな流れになるのではないか、と横澤さんは言うのです。池袋の可能性はもしかしたら、そんな所にもあるのかも知れないと感じました。
若年層の傾向をヤンキーとオタクの2種に分けて分析していることも興味深かったです。ヤンキー(広義のそれとは若干違っている定義付けだとは思います。おそらく一般に若年層に広がっている言葉でいうと「リア充」がそれにあたると感じました)はこだわりを持たず、興味関心は広く浅く、周囲との人間関係が最大の関心事でそれを最も大切にし、学校などリアルに居場所を作っている人々、ネットはLINEやSNSなど、実際に知っている人とのコミュニケーションを目的としている。それに対しオタク(これも元来とは様相が変わってきてはいますが大意は通じるでしょう)はこだわりが強く、興味は狭く深い、学校では孤立しがちでネット上に居場所を作る。ネット利用により趣味性の高いコンテンツに触れる。前者は渋谷・六本木・新宿などで活動し(おそらくは繁華街全般)、後者は秋葉原や池袋など趣味のものを買える場所、同好の人間がいる場所に集まる。これまではネットとリアルは分かたれたものであったのに対し、近年の若者は幼少期の頃からあたり前のようにインターネットがあった関係でその両者の境が希薄であり、その中間となる場として池袋を設定するというのはなかば自然な成り行きとも言える気がします。