7/8 池袋ふくろう物語第10話つづき
2011.07.08
その他
「そうだけど、いいんだよ。」
みんな悲しそうな顔をしながらえんちゃんの手を引き、公園から出ました。
公園から出たあと、えんちゃんはくやしくなってみんなに言いました。
「どうしてみんなぼくを止めるんだよ!もしかしたら勝てるかもしれないじゃん!」
ふくちゃんが言います。
「えんちゃん、もしもえんちゃんが勝っても、あの子たちはみんなで遊ぶのが楽しいってわかってくれないよ。けんかで負けたのがくやしくて、きっとえんちゃんにしかえしすると思うな。」
「そっか・・・みんなの公園だってわかってもらわないといけないのに、けんかしちゃったら良くないよね。みんなでどうやったらわかってもらえるか考えよう。」
えんちゃんとふくちゃんと小さい子たちは考えます。
でも、いい考えがなかなか出てきません。
ちょうどそのとき、やまさんがこちらに向かって歩いてきました。
やまさんは木やお花にとても詳しくて、公園の木のお世話をしているお兄さんふくろうです。
「みんなこんにちは。たくさん集まってどうしたんだい?入り口で止まらないで中に入って遊べばいいじゃないか。」
やまさんはみんなを見回して、不思議そうに聞きます。
えんちゃんはさっきあったことを全部やまさんに話しました。
えんちゃんの話をきいたあと、やまさんは大きくうなずきました。
「えんちゃんたちがその子たちに公園がみんなのものだってわかってほしいなっていう気持ちはとても大事なものだし、ぼくもそう思うよ。ぼくにいい考えがあるから任せて。」
やまさんはそう言うと、公園の中に入っていきました。えんちゃんたちも後を追います。
3羽はまだ滑り台の上にいました。
やまさんは滑り台の下まで来ると、3羽に向かって言いました。
「きみたち、小さい子たちにも公演を貸してくれないかな?」
そのなかの1羽が答えます。「いやだよ、だっておれたちが遊んでるんだもん!」
「君たちは公園が一番うれしいことって知ってるかい?」
もう1羽が答えます。「そんなの知らないよ」
「それはね、全部の遊ぶところに遊んでくれる子がいることだよ。きみたちが公園からみんなを追い出してすべり台だけで遊んでたらジャングルジムやブランコはさみしいままだろう?こうえんはみんながいたほうが嬉しいし、楽しくなるように頑張ってくれるんだよ。きみたちだって楽しい公園をみてみたいし、遊んでみたいでしょ?」
やまさんはゆっくりと3羽に言いました。
すると、一番こわかったふくろうがやまさんに聞きました。
「やまさん、それほんとう?」
「うん、本当だよ。うそだと思うならみんなを公園に入れてみてごらん?」
その言葉を聞いたふくろうはあそんでいいぞ、と言いました。
小さい子たちは遊びたい場所にかけて行って、遊び始めました。
しばらくすると、楽しそうな声があちこちから聞こえ始めました。
その声を聴いているとえんちゃんたちや3羽のフクロウも楽しくなってきました。
やまさんは本当に楽しい公園になったでしょ?みんなも仲よく遊びなさい、と言って木のお世話をしに公園の奥に入っていきました。
「おい、さっきはぶつぞなんて言ったり、追い出したりしてごめんな。やっぱり公園はみんながいたほうが楽しいよな。」
年上の、ふくろうにしっかりと謝られて、えんちゃんはなんだか恥ずかしくなってきました。
謝られた時にはどうすればいいんだっけと考えていると、隣にいたふくちゃんがいいことを思いついたわ!と嬉しそうに言いました。
「ねえ、わたしお兄さんたちといっしょにおにごっこをしてみたいな。だって飛ぶのはやそうなんだもん」
「お前たちは小さくてすばやそうだから捕まえるのが大変そうだな、いいぞ、たのしそうだ。なあみんなで鬼ごっこしようぜ」
お他の2羽のフクロウも楽しそうにいいぞ、やろうぜと言いました。
おにごっこをしているときに、えんちゃんは公園が一番うれしいことの話を思い出していました。
本当にその通りの話だったから、帰ったらパパとママにも教えてあげようと思いながらびゅんびゅんと元気に飛んで遊びました。
(#10終わり)