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池袋フクロウ物語第5話

2011.01.22

その他

 池袋フクロウ物語#5
 
お兄さんのおうちに1週間泊まった後、えんちゃんは池袋のおうちに帰ってきました。
お泊りの途中でパパやママに会いたいなと思い、
なぜか泣きそうになる日がたくさんありましたが、
泣くのはカッコ悪いなぁと思って我慢していたのです。

パパとママに会うと今度はもっと長くお泊りできるよ!
と言ってかっこよく見せましたが、もう当分の間お泊りはしなくていいなと心の中で思ったのでした。

                                  ★ ☆ ★

  お泊りから帰ってきて何日か経ったある日のこと、部屋で遊んでいるときにえんちゃんはパパに呼ばれました。
  「どうしたの?」
  えんちゃんが聞きます。
  「えんちゃん、今日は夜のお散歩をしに行こう!」
  えんちゃんのお家では時々、夜にお出かけをします。
 
  本当ならえんちゃんたちフクロウは夜の方が元気に動けるのですが、
  えんちゃんはまだ小さく、夜に遊びに行くのは危ないので
  夜は寝るように言われています。
  えんちゃんは街の明かりが宝石みたいにキラキラしていて、昼間よりも元気に早く飛べる夜が大好きなので大喜びです。
  「パパ本当に?」

  「ああ、今日は夜に流れ星が見えるらしいからね。」
  「本当?僕も見れるかなぁ?」
  えんちゃんは昨日の夜、星の本を読んでもらってから眠りました。
  本には流れ星がとてもきれいだということと、願い事をすると叶うかもしれないということが書かれていて、見てみたいなぁと思いながら眠ったのです。

  「流れ星は早く流れてしまうから、わからないなぁ。夜に元気に動くために、お昼を食べたら夜まで寝てようね。」
  「わかったよパパ!早く夜になってほしいなあ!」
  「向こうでお昼ができたってママが呼んでるよ。さぁ、お散歩に備えてたくさん食べよう!」
 
                                  ★ ☆ ★
 
  このあとえんちゃんはたくさんたくさんお昼を食べました。
  ごはんの後におなかがいっぱいになってぼんやりしていると、いつの間にか眠ってしまったようです。
  えんちゃんが目を覚ますと外はもう真っ暗。夜になっていました。
 
  「パパ、ママ、見て!もう夜になってるよ!早く行こうよ!」
  飛び起きてえんちゃんが言うと、パパとママがお出かけの支度をしながらやってきました。
「おまたせえんちゃん、お散歩に出かけましょうね。」
ママがにっこりと笑います。

「さあ、出発するぞ!」                  
お父さんがドアをあけ、みんな外に出ました。
これから夜のお散歩の始まりです。

                                  ★ ☆ ★

ビューン、ビューンと風を切って、パパとママとえんちゃんは池袋の街へと向かいました。建物や看板にはいろいろな色の明かりがついていて、いつもとは違う感じがします。
「きれいだね!いつも飛んでいるところじゃないみたいだ!」
えんちゃんははしゃぎます。

「そうだろう?昼間は明かりがつかないもんなぁ。」
「流れ星は夜遅くから出るんですって。まだ時間があるからいろいろな建物を見てみましょう。」
それからえんちゃんとパパとママの3羽はいろいろなビルを見て回りました。
そうしているうちに夜はだんだんと更けていき、流れ星が見えやすい時間になりました。
3羽は高い木の上にとまり、空を見上げます。

「ねえパパ、まだかなあ?」
「ちょうどいい時間だと思ったんだけどな・・・どうしたんだろう?予報が外れちゃったのかな?」
「まだ少し早いのかもしれないわ。待ってみましょう。」
3羽はしばらくの間空を見上げていましたが、なにも起こりません。
待つのに疲れてしまったえんちゃんがもう帰ろうよと言おうとしたとき、木の近くにあるマンションの窓があき、ベランダに人間の女の子が二人でできました。

「ニュースでは流れ星が見えるってやってたけど、ここだと見えないね」
「仕方ないよ、池袋で見えるわけないよ。だって、空が明るすぎるもん。」
「私が今まで住んでいた所では見えたんだけどな。やっぱり星の明かりは街の明かりに負けちゃうんだね。」
「残念だけどもう見えやすい時間は過ぎたし、寝ようか。」
  二人は部屋へと戻っていきました。
  それを見たパパとママも何も言わずに木から離れたので、えんちゃんもそれに続きました。
                                       
                                  ★ ☆ ★
 
  家に帰ってすぐ、えんちゃんはパパとママに聞きました。
  「ねえ、どうして流れ星が見れなかったの?」
  「それはね、街のキラキラした明りが星の光を消してしまったからだよ。」
  「えんちゃん、お兄ちゃんのお家の夜はどんな感じだった?」

  「電気がなくて真っ暗だったよ。でも月と星がとっても明るかった。」
    えんちゃんは、お兄さんが月や星がライトになってくれるんだよと言っていたのを思い出しました。
  「町の電気が星を見えにくくすることを難しい言葉で“光害”と言うんだ。」

  「光害は星を見えにくくするだけじゃなくて植物の寿命を縮めたり、私たちのような鳥の行動をおかしくさせたりもするのよ。」
  きれいな街の明かりが実は恐ろしいものだったことに、えんちゃんは驚きました。
  「そんなぁ!どうしたらいいのかな?」

  「街から明かりを消すことができれば一番だけど、人が多くて大きな街だからそれはできないだろうなぁ」
  パパが残念そうに答えます。するとママがにっこりと笑ってこんなことを教えてくれました。
  「実は電球の種類を変えたりして、光害を抑えようとがんばっている街も出てきたのよ。池袋もそうなってくれたらいいわね。」
 
                                  ★ ☆ ★    

話の後、もう遅いから寝なさいと言われてお部屋に入ったえんちゃんですが、なかなか眠れません。
つまらないのでミニカーを出して気づかれないようにそうっと遊んでいると、
窓の隙間から月が見えました。
周りに星はありません。

お兄さんのお家ではあんなにたくさんの星を引き連れて輝いていた月が、なんだか寂しそうに見えました。
今日は残念だったなあ、もしも今度流れ星が見えたら、何をお願いしようかな。
そう思いながらしばらくミニカーを動かしていると、だんだんまぶたが重くなって目の前がぼやけ、すやすやと寝息を立て始めました。(N.I)

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